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雁皮紙の美

絹のような品位のある光沢と手触りが魅力の雁皮紙。その気品ある魅力は古代から特に女性の「美」と「知」を彩るだけでなく,現代アートの世界でも雁皮紙の「繊細さ」が巧みに生かされています。また海外から「ジャパンクール」と呼ばれ注目を浴びている日本の文化。多くの文化財が長期に渡り「美しさ」を保っているのは,雁皮紙ならではの「強靱さ」と「王朝文化的優雅さ」を兼ね備えているからです。そんな“雁皮紙の美”を「料紙」「金銀糸」「現代アート」という3つのキーワードでご紹介いたします。

平安女流歌人が懐にしたためた

料紙

雁皮紙には大きく分けて「薄口」と「厚口」があります。なかでも「薄口」の雁皮紙は「薄様」と呼ばれ,平安文化を支えた女性たちが懐に忍ばせ,詩想が浮かぶと「かな文字」で筆を走らせた料紙,つまり詠草用紙のことです。成子紙工房の所在地である大津・桐生の里から程近い石山寺とゆかりの深い人物といえば,紫式部。
かの名作『源氏物語』のなかでも……「くれなゐのうすやうにあざやかに押し包まれたるを」(若菜上)「いと、いたうなよびたるうすやうに…(中略)…書き給へり」(明石)といった一文が散見されます。また『蜻蛉日記』でも……「文(ふみ)とりて返りたるを見れば、紅の薄様一襲(ひとかさね)にて、紅梅につけたり」(下・天延二年)といった一文があります。

「薄様」は女性用の料紙として色彩を施されたものが多く,成子紙工房では「王朝染雁皮紙」と呼ばれる漉き染めの料紙を創作しています。化学染料を一切使わず天然染料と顔料を使用しておりますので,「平安女流歌人を魅了した」当時の「薄様」にふさわしい表情を持っております。

女性の晴れ姿がいっそう雅やかに

金銀糸

色艶(あで)やかな金襴・緞子の帯といえば,京都・西陣織。そのなかでも特に高級な帯に使われる金糸や銀糸の原紙こそが雁皮紙。
金銀糸用に漉いた雁皮紙に漆を塗り金箔を押して裁断したものが平金と呼ばれる最高級品です。成子紙工房では,高級西陣織で使用される金銀糸用の雁皮紙を漉くだけでなく,金銀糸そのものを注文に応じて自家加工しております。
過去には,正倉院名物裂(めいぶつぎれ)の復元においても「成子紙工房」の平金が用いられました。京文化を表徴する織物にも欠かせない雁皮紙。「成子紙工房」の製紙技術が「王朝文化」を今に伝える上で大切な役割を果たしています。1958(昭和33)年には,皇后美智子様ご成婚の時,当工房の本金張り金糸がデコルテに使われました。

海外でも評価される新しい雁皮紙の可能性

現代アート

昨今,「ジャパンクール」などと称され,世界的にもに注目が集まっている日本の文化。雁皮紙の持つ新しい可能性と魅力の発見についても,国境を超え,今や世界中で萌芽しています。成子紙工房が漉く雁皮紙も国内はもとより,近年では現代アート方面で海外からの評価が高まっています。その魅力を,国内外で活躍するアーティストに語っていただきました。


☆栗田紘一郎さん
(写真家・ニューヨーク在住)

「雁皮紙を使う理由は2つ有る。紙そのものの心地いい風合いと、製法が自然環境を壊さないということ。私の場合は、水を使うプロセスなので丈夫さが要求される、また大きなプリントも作るので注文に応えて呉れるのも有り難い。」


☆具本昌(Bohnchang Koo)さん
(写真家/大学教員・韓国)

「日本や中国そして韓国には,じつにたくさんの上質紙があります。2年もの間,私は今日のデジタル化した印刷に適した紙を探していました。いろいろと試行錯誤した結果,成子紙工房の雁皮紙にたどりつきました。気品と温かみある素地。大変なめらかな紙肌。他に比類なき深みのある美しい黒が印刷で表現できるのも,そのおかげです。まるでプラチナ・プリントのようです。
成子紙工房の和紙との出逢いに,とめどない幸運を感じています。」


☆マリア・アントニア・ラミス
(Maria Antonia Ramis)さん
(アーティスト・スペイン)

「私にとって,成子紙工房の雁皮紙はユニークな存在です。「張りや強靭さ」のなかに「柔軟性と適応性」が共存しているからです。 折り重ねたり,シワにしたり,処理を施しても,ちょっとしたことでは破れませんし,作品づくりにおいても頭に思い描く形へと時間を要せずして導いてくれます。私が成子紙工房の雁皮紙をこよなく愛するのは……まるで紙に魂が宿っているかのように感じているからです。とても貴重で洗練された物事を扱う気分です。